どんどん、シャンシャン、ダンッダンッ
ある日、「ばんび」を訪れると、そこにはゆかいな音の渦が広がっていました。
音にあわせて体を揺らす人、思わず踊り出す人、ステップを踏む人、足先でリズムをとる人──。

ここは来島会と瀬戸内サーカスファクトリーとがいっしょになって創り上げるサーカスパレードの練習現場。 一人ひとりの「個性」が、互いに呼応して、どんどんカラフルなリズムを生み出していきます。
講師の合図で、手拍子や足踏みが重なり合い、まるで音の塔が立ち上がるかのよう。笑い声も、息づかいも、パフォーマンスの一部になっていく瞬間は、見ているだけで胸が弾みます。
「え、そんなやり方もあるんだ!」
隣の誰かの動きに刺激を受けて、自分の表現も変化する。
そうして個性と個性がぶつかり合い、溶け合い、新しい発見の連鎖が生まれる。
最後には全員が輪になり、音と体と心をひとつに。
そこに生まれるのは、言葉では言い表せない、ちょっと特別な“何か”。
それは、誰か一人だけでは出せない、みんなで作る魔法のような瞬間でした。



サーカスの楽しさは「共に作ること」
今回のワークショップには、瀬戸内サーカスファクトリーの皆さん、音楽家の片岡祐介さん、そして「ばんび」「らびっつ」「なかよし学童くらぶ」の子どもたちや「ふきあげワークス」を利用するみなさんが参加しました。
子どもも大人も自然に混ざり合い、決められたリズムや振付に沿いながら、ある人は即興でアレンジして踊ります。きっちり動く人と自由に表現する人が混ざり合い、思いがけない化学反応が起こるのです。
片岡さんはこう話します。
「いろんな子、いろんな人がいるからね。動きたい子、楽器を触りたい子、声を出したい子。決められたリズムに沿う子もいれば、自由に表現したい子もいる。その両方が、好きなやり方で交じり合える空間。それが理想的だと思うんだよね」

完成形が決まっていないからこそ、いろんな人が関わり、表現を交わす余地が生まれます。子どもたちが段ボールに描いた動物たちも、そんな「ジャングル感」を増幅させます。
「段ボールの動物もそれぞれ表現が豊かで、ベシャーっと塗ってあったり、よくよく見たら凶暴で怖い部分があったり。でもそのアートが、サーカス団の多様な表現を包んでくれるんじゃないかなという感じがしますね。 」
瀬戸内サーカスファクトリー代表理事の田中未知子さんは、本番で見たい景色をこう語ります。
「いろんな人が自由に入り、楽しむ。そこにサーカスの“引力”が生まれて、自然と人が集まってくる――そんな空間を作りたいです。」

相手の存在を認め合うサーカスという空間
サーカスの面白さは、誰でもワクワクできるところにあります。
「サーカスってハチャメチャで、いろんな人がいて、ダンスだけじゃなくて、あっちで空中芸してる人がいると思ったら、こっちで皿回しをしていたり。普段の生活だと『ちゃんとしなきゃ』ってなるけど、ここではそんなハチャメチャな風景をありのままに、いろんなものを受け入れる。個性を個性と認められる、サーカスってそんな空間なんだと思います」


時にハチャメチャな瞬間があっても、観客も創り手もいっしょになって受けとめ、その場を創り上げていく。私もいっしょに輪の中に入ってみると、言葉にせずとも互いの存在を感じ合い、思わず笑顔がこぼれました。共に体験することでしか味わえない景色と感動――それがサーカスの魅力です。

「サーカスの語源は、circus――“円”です。円があって、お客さんはぐるりとつながり、もし席が足りなければお尻を動かして詰めて座る。そこに自然と渦が巻き起こるような、そんな感覚があります。ただ見ているだけではなく、みんなでその空間を作っている。だから、誰もがその場を作る“責任者”であり、大事にしているんです。
もちろん自由だけれど、みんなでその空間を支え合う感覚もあって、『絶対にみんなで見届ける、成功させるんだ!』という空気が生まれる。向こう側が笑ってくれれば、こっちも安心する――そんな一体感があります。」

サーカスの輪に入ると、そこには「お客さん」という存在はいません。
みんながその場を作り上げる当事者。手拍子や足踏み、笑い声や歓声――ひとつひとつが空間を形作り、みんなでひとつのサーカスを創り上げます。
「無条件に楽しいっていうところが、一番大きいですね。みんなワクワクして、やってみたいと思える。ここでは誰もが、自分が何か得意かもしれない――そう思える瞬間が必ずあるんです」

そんな田中さんの言葉どおり、サーカスの輪の中では、誰もが自由でありながらも互いを感じ合い、自然とワクワクが広がっていきます。そうして自分も、隣の人も、そして全員の個性がふわりと重なり合うことで、ここでしか味わえない、ちょっと不思議で楽しい瞬間が生まれていました。



11月3日(月祝)は今治里山にサーカスパレードがやってくる!
いよいよ11月3日(月祝)には、今治里山にサーカスパレードがやってきます。
サーカスパフォーマンスに地域のみんなが加わって、ゆるやかで賑やかなパレードが山あいを練り歩く。誰もが主役のお祭りです。
サーカスパレードに加わるもよし、音楽にからだを乗せて楽しむもよし。瀬戸内サーカスファクトリーによる現代サーカスのパフォーマンスも上演します。思い思いのカタチで、一緒にお祭りを楽しみましょう。
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書いた人:小林友紀(合同会社企画百貨)
アート、表現、暮らし、食、教育などに興味関心を広げながら、今治を拠点に執筆や広報の仕事をしています。

