「すき!」から広がる世界とのつながり。だんだんBASEギャラリー展が結ぶ社会との関わり

だんだんBASEギャラリー展とは

古民家交流スペース「だんだんBASE」ギャラリー。
ここでは、一人ひとりの「すき!」という気持ちや、その人ならではの「こだわり」にフォーカスした企画展「だんだんBASEギャラリー展」を開催しています。

強いこだわりは、ともすれば周囲の人から「何の役に立つの?」「少し変わっているな」と理解されにくいこともあります。しかし、視点を変えてじっくり関わってみると、そこには本人にしか見えていない豊かで魅力的な世界が広がっていることに気づかされます。だんだんBASEギャラリー展は、そんな一人ひとり感性の「違い」を面白がりながら、周囲の人とのあたたかな関わりを増やしていくことを目指しています。

今回は、記念すべき2025年度第1回目のギャラリー展『葵電機展〜好きからはじまるぼくだけの物語〜』のアーティストである越智葵(おちあおい)さん、葵さんのお母様、そして企画者であるなかよし学童くらぶ 管理者の重松理恵さん、イマバリ・パラビエンナーレの事務局の三幡大輔が集まりました。自分の「すき!」を表現することで、どんな変化が起きたのか。当時の振り返りとともに、2026年度の新たな展示の告知をお届けします。

越智葵さんを囲んで ―― 葵電機展をきっかけに、ぼくの世界がさらに大きく広がった

三幡:
去年の8月に葵さん初の個展となる「葵電機展」を開いてから、すごい広がりがありましたよね。そもそも、葵さんがエアコンを好きになったのはいつ頃からだったんですか?

母:
2歳の頃からですね。ずっと天井のエアコンを見上げていて。ペンを持たせた時から丸と四角と直線を描くのが異様に上手くて、「何この子!」って驚いていっぱい絵を描かせたんです。そのうち言葉を喋れるようになると、「あの店のエアコンがどうたら」って言い出して(笑)。

葵:
…(持参したタブレットの画面を突然見せながら)これ、市役所にあったエアコン。風量調節。

三幡:
市役所がそうだったかどうかは覚えてないけど。それLがLow、MがMiddle、HがHighで、Lが弱い、Mが真ん中、Hが強い。

葵:
ローが弱い。

三幡:
おお!英語勉強してるね。重松さんは「なかよし学童くらぶ」で葵さんと接していて、どんな風に感じていましたか?

重松:
最初は、職員に「描いて」と言って、自分では描こうとしませんでした。でも、職員が「葵さんが描いて」と声掛けし、描いてくれたエアコンの絵をほめていたら、どんどん描くようになるし、自分で調べるし、段ボールで作るようにもなって。私たち職員も「いいね!」と話しているうちに、これはみんなに見てもらいたいと思うようになったんです。

葵さんは有名人!

三幡:
実際に個展を開いてから、地域の人たちの反応に変化はありましたか?

重松:
個展の後、うちの親が休みの日にイオンに行ったら、「葵君って髪の毛切ったでしょ」と言っていて、聞いてみたら、「パン屋さんでずっと天井を見上げている坊主の男の子がいたから。あ、葵くんだと思って」という話だったんです。

三幡:
葵さん、有名人じゃないですか!

重松:
あと、全然知らない人から、なかよし学童くらぶのメールアドレス宛に、古いエアコンの画像が届いたこともありましたよね。名乗らずにただ古いエアコンの画像だけが届いて(笑)。

三幡:
ええっ、すごい広がり方ですね。

重松:
他にも、なかよし学童くらぶの子どもたちの保護者の方がお迎えに来た時に「来週病院で休みます」って言ったら、葵さんが「どこの病院?写真撮ってきて」ってお願いして。

三幡:
病院のエアコンの写真をお願いしたんだ(笑)。

重松:
そうなんです。そしたらそのお母さんが病院に行って、「写真撮らせてください」って言ったら、病院の人も「あ、葵電機展の!」って言って。わざわざ汚い古いエアコンを紹介して、写真を撮らせてくれたりして。なんだかんだ言って、みんなが葵さんのことを分かってくれて、優しく協力してくれたのが本当に嬉しかったです。

エアコン大好きな葵さんの居場所が地域に広がっていく

三幡:
NHKの「おはよう日本」で放映いただいたことをきっかけに、大好きなパナソニックの工場見学にも招待いただきましたよね。

重松:
本当に、私たちも初めての企画展でこんなに反響があるとは予想していなくて驚愕しました(笑)。工場見学まで行けるなんて思っていなくて。

母:
パナソニックの工場では、どの人に話しかけても全部答えてくれるし、見たいところ全部見せてくれて。

葵:
あのナノイー吸ってカレーの匂いが(消えるやつ)……。工場の中にさ、SANYOの壊れたエアコンがあった。

三幡:
工場、色々あったけど、SANYOのエアコンが一番記憶に残っているんだ!(笑)

母:
普通は見られないようなところまで見せていただいて、本当に夢のような時間でした。

2026年4月1日・2日 パナソニックHVAC&CC株式会社 群馬県大泉工場 見学の様子

三幡:
葵さんのとても強いすきって気持ちが、周りの人たちを変えていくんでしょうね。重松さんは、こうした変化ってどう思います?

重松:
私が一番嬉しかったのは、保護者の方や地域の人たちの「葵さんへの見方」が変わったことなんです。ただ「すごいね」って言うだけじゃなくて、葵さんのこだわりに突っ込んで聞いてくれるようになって。 たとえば、葵さんがお店の真ん中でずっと天井を見上げていると、知らない人からは「どうしたんだろう?」って不思議に思われますよね。でも、葵さんのことを知ってくれている人なら「ああ、またエアコン見てるなあ」で終わるんです。

三幡:
「変わった子」じゃなくて、「エアコンが大好きな葵さん」として、個性がそのまま受け入れられているんですね。

重松:
はい。「こんなに好きなことがある子がいるんだよ」って地域の人に知ってもらうことで、その子が地域の中で受け入れてもらえるんじゃないか。そんな思いで企画したので、少しでもその輪が広がったのなら嬉しいです。

三幡:
個展を開いて、みんなから「かっこいいな」「すごいね」と言われて、葵さんも嬉しいよね?

葵:
嬉しい。

三幡:
単なる思い付きですけど、2027年2月の第一回イマバリ・パラビエンナーレで、オンラインで、エアコン好きの人たちを繋いで「全国エアコンサミット」やりましょうか?

母:
行く行く! やりましょう!

葵:
(タブレットを見せながら)ねえねえ、このエアコンはもう取り外すの? 

三幡:
また知らないところのエアコンをもらおうとしている(笑)でも、葵さんのその純粋なすきが、これからも周りを笑顔にしていくんでしょうね。

2026年度だんだんBASEギャラリー展のご案内

2026年度も、私たちはだんだんBASEギャラリーにて、魅力あふれる展示を続々と開催いたします!

今年度の幕開けを飾る第一回企画展は、2026年6月27日(土)からスタートする「今治福祉園をはみ出す〜壁いっぱいの私たちの気持ち〜」です。

【第一回】今治福祉園をはみ出す〜壁いっぱいの私たちの気持ち〜
◆日時:2026年6月27日(土)〜29日(月)、7月4日(土)〜6日(月)10:00〜15:00
◆場所:だんだんBASEギャラリー(今治市高市甲161番地3)
※入場無料・駐車場あり

今回のアーティストは、今治福祉園で生活されている53名の利用者の皆さんです。彼らの日常には、お菓子の袋を大切に集めたり、ゴム紐の感触をずっと楽しんでいたり、私たちには不思議に見えるけれど、実はとても豊かで面白い世界が広がっています。

でも、施設という集団生活の中では、その想いを出し切れない部分もあって。だからこそ今回は、彼らが今治福祉園を飛び出し、ギャラリーの真っ白な壁に感情をぶつけたそのままを展示することにしました。何が生まれるか私にも想像がつきませんが、そこには理屈抜きのエネルギーが満ちているはずです。制作風景の映像や、皆さんが参加できる工作スペースも用意していますので、ぜひ彼らの想いと出会いに、遊びに来てください。

<2026年度今後のギャラリー展スケジュール(予定)>
第二回:2026年9月19日(土)~24日(木)
「ゆりの森とキャンプ~ビニールハウスの愉快な仲間たち~」
放課後等デイサービスを利用する田中優璃さんが描く愉快な動物たちの作品を、森に見立てたビニールハウスに展示し、ご家族が実際にキャンプを行うインスタレーション!

第三回:2026年12月19日(土)~24日(木)
「杏のクリスマス・シンフォニー」
八和田絵画教室に通う熊崎杏さんの感性がクリスマスをテーマにどのように花開くかをお届けします。

第四回:2027年3月6日(土)〜8日(月)、13日(土)〜15日(月)
「勇気のカタチ~切実なごっこ遊び~」
苦手な病院を克服するため、コミュニケーションを取るために日々手作りされる「眼鏡や注射器」などの切実な工作を普段使用している様子とともに展示。

一人の「すき」や「こだわり」が、誰かの心を動かし、社会とつながる架け橋になる。今年度もだんだんBASEギャラリーで、あなたをお待ちしています!