開会宣言

私たちの社会は驚くほど便利で、安全なものになりました。トラブルが起きないようにルールが整えられ、リスクはあらかじめ排除されています。より一層、摩擦が起きないようルールが敷かれた、とても安全で優しい世界へ向かっています。

けれど、そのきれいに整えられた世界の中で、私たちは少しだけ息苦しさを感じてはいないでしょうか。波風を立てないよう過剰に気を配るあまり、自分と違うことや、知らないことに出会うと、怖くなったり、距離をとりたくなったりすることも多くあります。その結果、予想外の出来事に心が揺さぶられたり、相手の不器用な一面を愛おしく思ったりするような、お互いが確かにここにいると感じられる瞬間が少なくなっています。

幸いなことに、この今治の街には、人と人が自然に交わり、違いを面白がるようなあたたかな居場所や実践がすでにいくつも存在しています。例えば、ここイマバリ・パラビエンナーレ開会宣言の地である「今治ホホホ座グループ」さんも大きな先達です。

私たちがこれから始めようとしているのは、決してこの街に無かった新しいものをゼロから作り出すことではありません。

社会福祉法人である私たちが今すべきことは、街のあちこちで育まれてきたその豊かな日常の風景を、特別な場所だけのものにせず、これからの地域の当たり前の景色へと押し広げていくことです。

それは、私たち自身がこれまでのあり方を問い直し、地域社会の景色を根底から変えていくための挑戦でもあります。

そのために私たちはアートの力を借ります。立派な芸術作品を展示することが目的ではありません。私たちにとって、アートとは、人の営みそのものであるからです。

障がいのある人もない人も、子どもも大人も、アーティストも地域の人も、日本人も外国人も、同じ街の中で出会い、予定通りにいかないことを面白がり、お互いの違いを「まあいいか」と許容し合う。このうまくいったりいかなかったりする文化こそが、窮屈な社会をかき混ぜ、人を人として結びつけてくれます。

2026年8月、私たちの実践として室屋町に小さな拠点「私設公民館ガッチャンコ」をオープンします。すでに街にある無数の居場所とつながり合い、今治が「街まるごと公民館」となるような景色を描いていきます。
この街のすべてが、誰かと出会い、何かが始まる「公民館」になることを願って。

ここ今治から、みなさんと共に“共生を文化にする”新しい挑戦を始めます。

本日、2026年5月20日。
私たちは、イマバリ・パラビエンナーレの開会を宣言します。


社会福祉法人来島会 理事長/イマバリ・パラビエンナーレ総合ディレクター